
海外メディアが、Valveの新型VRヘッドセット「Steam Frame」向けのアクセサリー「Arcturus Vision Camera」を紹介しています。Arcturus Vision(旧Arcturus Industries)が手がけた、ヘッドセット前面の拡張ポートに取り付ける小型のカメラで、Steam Frameに、カラーのパススルーと、立体視できる「空間ビデオ」の録画機能を加えます。
Steam Frameは、標準ではモノクロ(白黒)のパススルーしか備えていません。パススルーとは、ヘッドセットのカメラで、外の景色を見られるようにする機能です。日本では、Valve製品の正規販売代理店であるKOMODOが、Steam Frameを9月15日に発売し、このカメラも、同日に、税込2万6,980円で発売しました。
本記事では、元記事と、Arcturus Visionの公式情報、国内の発売情報をもとに、カメラの仕様、アプリ、注意点を整理します。
この記事のポイント
- Steam Frame専用のカメラで、標準のモノクロパススルーをカラーにし、空間ビデオの録画にも対応する。
- Sony製の32MPセンサーを2基、64mm間隔で搭載。録画は、片目2,464×2,464(同社の言う「5K」)で最大60fps、片目1,232×1,232で最大120fpsで、10-bit HLG HDRに対応する。
- 重量は10g未満で、同社によると、取り付けるだけで、カラーパススルーが自動で有効になる。
- 3D Gaussian Splatsは、同社のビューアーで見られるが、作る(生成する)には、外部のツールが必要。
- 米国の価格は149ドル、日本の価格は税込2万6,980円。Steam Frame以外のヘッドセットでは使えない。
Steam Frameとパススルーの現状
Steam Frameは、ValveのPC向けストア「Steam」のライブラリを遊べる、ワイヤレスのVRヘッドセットです。PCからのストリーミングのほか、ヘッドセット単体でも動作します。標準のパススルーは、前面のトラッキング用カメラを使った、モノクロの映像です。UploadVRは、この映像の解像度を、片目あたり約1.3MPと整理しており、色がないだけでなく、Quest 3よりもかなり粗いと伝えています。
Arcturus Visionは、Valveと密に連携している企業で、Steam Frame前面の拡張ポートに取り付けるこのカメラを、「Steam Frame Compatible」の認証つきで提供しています。元記事の筆者は、Steam Frameを購入するなら、このカメラを加えることで、空間ビデオの録画に使える機器になると評価していますが、性能の比較は、Arcturus Visionの主張にもとづいています。
Arcturus Vision Cameraの仕様
| センサー | Sony製32MPのRGBセンサー×2(64mm間隔) |
|---|---|
| ビデオ録画 | 5K(片目2,464×2,464)で最大60fps、2.5K(片目1,232×1,232)で最大120fps。H.265のステレオ録画 |
| パススルー | 5K(4,928×2,464)で標準60fps、特別な設定で最大72Hz。2.5K(2,464×1,232)では最大144Hz(実験的) |
| 視野角 | 125×105°(両眼)。垂直は、ソフトウェア更新で最大125° |
| 色・HDR | 10-bit HDR(HLG)。8-bit、10-bitのsRGBでも録画できる |
| ピント範囲 | 30cmから無限遠 |
| 重量 | 10g未満 |
| 接続 | Steam Frame前面の拡張ポート |
| 対応機種 | Steam Frame専用(他のヘッドセットでは動作しない) |
| 価格 | 米国149ドル(執筆時点の参考価格で約2万3,500円)。日本は税込2万6,980円 |
同社が「5K」と呼ぶのは、左右の映像を並べた4,928×2,464で、片目の解像度は、2,464×2,464(約6MP)です。UploadVRによると、センサーは32MPですが、パススルーに使うのは、その約4分の1程度です。パススルーの更新が高いと、人工照明の下で、ちらつきや縞模様が出ることがあり、高いリフレッシュレートは、自然光の下での使用が向いていると、同社は注意しています。
空間ビデオの録画とアプリ
空間ビデオとは、左右の目に別々の映像を見せて、立体的に見える動画のことです。Arcturus Visionは、Steam上で、無料のアプリ「Arcturus Vision Camera」を提供しています。録画した空間ビデオの再生ができ、サンプル動画も含まれています。このアプリは、Steam Frame専用で、VR専用のアプリです。
UploadVRによると、このアプリには、他のヘッドセットにない特徴があります。録画中のヘッドセットの位置も、フレームごとに保存するため、再生時に、映像が撮影時の動きに合わせて、利用者の周囲を動く「Stabilized Immersive Playback」を使えます。UploadVRは、一人称視点の3D動画を見る方法として、これまで見た中で最も良いと評価しています。
録画したデータは、WindowsとMac向けの「Arcturus Vision Sync」で、PCに転送できます。Apple Vision ProやMeta Quest、その他の3Dプレーヤー、通常の2D動画向けに変換もできますが、安定化再生の機能は付きません。なお、UploadVRは、このカメラを使っている間は、バッテリーの持ちが落ちると伝えています。
3D Gaussian Splatsの扱い
3D Gaussian Splattingは、複数の視点の映像から、3Dの空間を再構築する手法で、できあがったデータを「splat」と呼びます。Arcturus Visionは、splatを見るためのビューアー「Arcturus Vision Gaussian XR」を、Steamで提供しています。Steam Frame上で動作するように最適化されており、PLYやSOGの形式のファイルを、自動で探して表示し、VRで見られます。
ただし、splatを作るための、簡単な操作の画面は、現時点では提供されていません。同社は、オープンソースのツールを使う手順を案内しており、NvidiaのGPUを積んだLinuxのPCが必要です。UploadVRは、Metaの「Horizon Hyperscape」のような機能を期待すると、違うと注意しています。
同社による他機種との比較
Arcturus Visionは、自社サイトで、空間ビデオの録画について、他のヘッドセットとの比較表を公開しています。次の表は、その内容です。
| 項目 | Steam Frame + Arcturus Vision Camera | Apple Vision Pro | Meta Quest 3 | PICO 4 Ultra |
|---|---|---|---|---|
| 録画解像度(片目) | 2,464×2,464 または 1,232×1,232 | 2,200×2,200 | 1,280×1,280 | 2,048×1,536 |
| 録画フレームレート | 5Kで60fps、2.5Kで120fps | 30fps | 最大60fps | 最大60fps |
| 視野角 | 125×105°(両眼) | 71.59°(水平、片目) | 73°(水平、片目) | 76.35°(水平、片目) |
| ビット深度・HDR | 8-bit SDRまたは10-bit HDR(HLG) | 8-bit SDR | 8-bit SDR | 8-bit SDR |
この表は、同社が作成したもので、他社の数値は、各社の撮影アプリやAPIから取得したものとされています。視野角は、他社が片目、Arcturusが両眼の数値のため、そのまま比べることはできません。また、パススルーの解像度では、UploadVRの整理で、Apple Vision Proが片目6.5MP、Steam Frameとこのカメラが6.1MP、Quest 3が4MPで、Vision Proのほうが上です。
Steam Frameの主な仕様と国内の発売
| プロセッサー | Snapdragon 8 Gen 3(4nm、ARM64) |
|---|---|
| メモリー・ストレージ | 16GB。256GBまたは1TB。microSDカードスロットあり |
| ディスプレイ | 片目2,160×2,160のLCD。72〜144Hz(144Hzは実験的) |
| 視野角 | 最大110度 |
| パススルー | 標準はモノクロ(前面の外向きカメラを使用) |
| 重量 | 約440g(ヘッドストラップを含む本体) |
| 主な付属品 | コントローラー、ワイヤレスアダプター、Half-Life: Alyx。電源アダプターは付属しない |
| 米国の価格 | 256GBが1,059ドル(執筆時点の参考価格で約16万7,000円)、1TBが1,299ドル(同約20万5,000円) |
| 日本の価格(税込) | 256GBが19万9,980円、1TBが24万4,980円(KOMODO STATION) |
日本では、Valveの正規販売代理店であるKOMODOが、9月15日に、KOMODO STATIONで、Steam Frameを発売しました。同じ日に、Arcturus Vision Cameraも発売され、台湾と香港でも、同時に販売が始まりました。在庫や出荷の状況は、販売ページで確認してください。
編集部コメント
今回のカメラは、Steam Frameの弱点とされる、モノクロで解像度の低いパススルーを補う周辺機器です。UploadVRは、標準のパススルーを片目約1.3MP、カラー化した場合を6.1MPと整理しており、見え方は大きく変わります。一方で、空間ビデオの録画性能の比較は、同社が自社の表で示したもので、競合の数値は、取得元がそれぞれ異なり、視野角は片目と両眼の違いもあります。購入を考える場合は、同社の主張として読む必要があります。
もう一点は、3D Gaussian Splatsの扱いです。同社が提供するのは、ヘッドセット上のビューアーと、位置情報つきの映像素材で、splatの生成には、LinuxのPCとNvidiaのGPUを使う、外部ツールの手順が案内されています。誰でも手軽に3D空間を作れる機能ではない点に、注意が必要です。また、このカメラは、Steam Frame専用で、UploadVRは、使用中はバッテリーの持ちが落ちるとも伝えています。
本記事は海外メディアで公開された情報を参考に、日本向けに内容を整理・要約しています。また、仕様や価格、国内の発売情報は、Arcturus Vision、KOMODO STATION、UploadVR、Moguraの記事を参考にしています。
参考記事:Arcturus Vision Camera elevates Steam Frame’s VR experience
画像:株式会社KOMODO(PR TIMES)
参照:「STEAM FRAME」専用VRカメラ「ARCTURUS VISION CAMERA」、本日発売
※掲載画像は株式会社KOMODOがPR TIMESで配信したプレスリリースより引用しています。
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