
iPadで本格的なDMX照明制御ができる「Blackout Lighting Console」の最新版「Blackout V3」が発表されました。V3はサブスクリプション(月額・年額)のみの料金体系になり、既存のV2永久ライセンス所有者への移行措置も含めて、ユーザーの間で議論を呼んでいます。海外メディアの論説は、V3そのものは大きな進化だとしつつ、移行の進め方の公平さは別の問題だと指摘しています。
Blackout Lighting Consoleとは
Blackoutは、プロ向けのDMX照明制御をiPad上で行えるソフトウェアです。高価で持ち運びにくい専用の照明コンソールに代わる、携帯性の高い選択肢として、小規模なクルーから大規模な制作現場まで使われてきました。論説の筆者は、過去10年でもっとも影響力のある照明ツールの一つだと評価しています。
開発は、現場で働く照明のプロが中心となって行っています。大きなソフトウェア企業ではなく、創業者のジェフ・ブリンク氏と、プログラマーのイアン・ピーターソン氏を中心とした小さなチームで、ユーザーとの距離が近いことも特徴とされています。
編集部補足:DMXとユニバースとは
DMXは、舞台や映像制作で照明機器を制御するための通信規格です。「ユニバース」は、そのDMXの出力の単位で、1ユニバースあたり512チャンネルを扱えます。ユニバース数が多いほど、たくさんの照明機器を同時に制御できます。
Blackout V3の料金体系
V3は、Core、Advanced、Pro、Commandの4つのティア(階層)で提供されます。違いは、主にDMXの出力数(ユニバース数)と、ピクセルマッピングなどの機能です。公式の料金ページでは、年額払いを選ぶと「2か月分が無料」(17%オフ)と案内されています。
| ティア | 出力 | 月額表示 | 年額 |
|---|---|---|---|
| Core | 2ユニバース | 24.99ドル(約3,900円) | 299.90ドル(約47,200円) |
| Advanced(人気) | 8ユニバース | 49.99ドル(約7,900円) | 599.90ドル(約94,500円) |
| Pro | 32ユニバース | 83.33ドル(約13,100円) | 999.90ドル(約157,500円) |
| Command | 無制限 | 124.99ドル(約19,700円) | 1,499.90ドル(約236,200円) |
円換算は1ドル=157.5円の目安です。年額は一括払いで、返金はできないとされています。
契約期間と支払い
CoreとAdvancedは、月ごとの契約です。ProとCommandには3か月の最低契約期間があり、3か月分を前払いします(Proは299.97ドル、約47,200円。Commandは449.97ドル、約70,900円)。これを1か月分に直すと、Proが99.99ドル、Commandが149.99ドルになり、表の月額表示より高くなります。表の月額表示は、年額払いにした場合の月あたりの額とみられます。実際の支払いは、契約前に公式ページで確認してください。
無料体験として、Commandを14日間試せます。どのプランを選んでも使え、カードの登録は不要です。1ユーザーにつき1回で、体験の終了後は選んだプランに移ります。
ティアごとの主な違い
- Core: 2ユニバース出力、LivePlot 1ページ、QuickPlot 1ページ、高度なエフェクト・フェーダー・マクロ、DMX入力、Astera・Cerise・Stream Deckとの連携。クラウド容量は500MB。
- Advanced: Coreに加えて、8ユニバース出力、LivePlotのページ数が無制限、QuickPlot 2ページ、LIT DUOの色合わせ、Stardustとの連携、入力トリガー。クラウド容量は1GB。
- Pro: Advancedに加えて、32ユニバース出力、ネイティブな色モデル(RGB、CMY、HSV、xy)でのピクセルマッピング、QuickPlot 3ページ、NDIの映像入力によるピクセルマッピング。クラウド容量は2GB。
- Command: Proに加えて、無制限の出力、高度な出力ルーティング、ACESパイプラインを使ったトゥルーカラーのピクセルマッピング、フィクスチャごとの色調整、ISFシェーダーの読み込み、音に反応するピクセルマッピング。クラウド容量は4GB。
バックアップも、ティアが上がるほど手厚くなります。ショーファイルごとに保存できるバックアップは、Coreがローカルとクラウドで各1つ、Advancedが各3つ、Proが各10、Commandが各15です。自動バックアップの間隔も、Coreの60分から、Advanced 30分、Pro 15分、Command 5分と短くなります。コラボレーターは、CoreとAdvancedが1人、ProとCommandが2人です。
ショーファイルは、iPadに保存され、ユーザー自身のものとされています。クラウドのバックアップは、サブスクリプションの終了後も90日間残ります。法人向けには、3台以上の契約を前提としたエンタープライズプランもあり、条件は営業を通じて決まります。
V3の主な進化点
V3は、早期に試したユーザーから、大幅なアップグレードだと評価されています。主な進化点は次のとおりです。
- 大幅に高速になったインターフェース
- より強力になったエフェクトエンジン
- プロット機能の改善
- クラウドバックアップ
- 高度なピクセルマッピングのツール
当初は価格に疑問を持っていた匿名のユーザーも、V3を試した後には、作り直しの規模とエンジンの性能を認めたとされています。そのうえで、価格の議論は当然あってよいが、アップデートの価値も踏まえるべきだと述べています。
サブスクリプション化の理由
筆者は、継続課金には事業上の合理性があるとしています。照明器具のフィクスチャプロファイルの維持、新しいiPadOSへの対応、ユーザーへの対応、プロ向けソフトの継続開発には、継続的な労力が必要だからです。
ブリンク氏も、DMXのコンソールを一度買い切っても、不具合が直され続ける保証にはならないと述べています。発売後に新しい売り物がなくなった後でも、誰かが対価を得て、ソフトの面倒を見続ける必要があるという考え方です。
また、プロの利用者にとっては、費用を回収しやすいという見方もあります。V3を支持するあるユーザーは、Blackoutを入れたiPadを1日250ポンドで貸し出しており、年額999ドルのProライセンスは、数日のレンタルで元が取れると見込んでいます。筆者は、フル装備のgrandMAやChamSysのシステムと比べれば、Blackoutは今でも手頃で、持ち運びもしやすいとしています。
議論の中心はV2ユーザーへの対応
強い批判は、サブスクリプションそのものよりも、移行の進め方に向けられています。V2を持つユーザーの中にも、継続的な開発には費用が必要で、開発者が報酬を得るのは当然だとして、サブスクリプションの考え方自体は支持する声があります。
V2の所有者に提示される移行クレジット
V2の永続ライセンスの所有者は、V2を使い続けることも、永続ライセンスを手放す代わりに、期間限定のクレジットをV3に充てることもできます。クレジットの内容は、過去に何を購入したか、どのティアを選ぶかによって変わります。
ただ、選ぶティアによっては、提示されたクレジットが大きく目減りします。あるユーザーは、449.97ドル(約70,900円)相当と案内されたクレジットが、Advancedに充てると179.97ドル(約28,300円)にしかならないと報告しています。しかも、その場合は、約2,375ドル(約37万4,100円)で購入したとされるV2のパッケージを手放す必要があります。V2を安定したバックアップとして残せるなら、割引が小さくても構わないという意見もあります。
V2は「Legacy」に改名
V2のライセンスに有効期限はなく、現時点では使い続けられます。ただし、ソフトの名称は「Blackout V2(Legacy)」に変わりました。開発元はメンテナンスを続けるとしていますが、将来のiPadやOSとの互換性は不透明です。
映画の撮影現場では、信頼性が何より重視されます。過去のiOSアップデートで、Blackoutに一時的な深刻な問題が出たことを覚えているユーザーもいます。今すぐV3への移行を迫られる人はいませんが、時間と技術の進歩が、いつか決断を迫るのではないかという不安があります。
ティア構成への不満
V2では、ユニバース数の追加や、MIDI、LivePlotなどの機能を、個別に購入できました。V3では、これらの機能がティアに組み込まれています。たとえば、「Coreに4ユニバース分を足したい」「Advancedから、LIT DUOだけを加えたい」といった組み合わせは、今のところ作れません。シンプルな構成は開発元には好都合ですが、ユーザーは不要な機能にも費用を払う可能性があります。
Adobeの前例との比較
筆者は、今回の移行を、AdobeがCreative SuiteからCreative Cloudに移行した例になぞらえています。Adobeの移行は、継続的な開発が約束されたにもかかわらず、非常に不評でした。Adobeは、CS6の所有者にライセンスをそのまま使い続けることを認め、対象のCreative Suiteユーザーには、初年度に約40%の割引を提示して、移行を促しました。Blackoutの規模や事情はまったく異なりますが、ユーザーはこの前例と比べながら、今回の移行を見ているとしています。
筆者の提案
筆者は、Blackoutは持続可能な事業であるべきで、開発者が報酬を得るのは当然だとしています。V3にその価値がある可能性も認めたうえで、新しいコンソールの品質と、移行の公平さは、別の問題だと述べています。
今回の議論は、Blackoutが拒絶されているというより、ユーザーがそれだけ信頼を寄せていた証拠だとしています。より柔軟なクレジット、長めの導入期間、V2を残せる選択肢があれば、「最後通告」ではなく「招待」として受け止められたはずだと指摘しています。
編集部コメント
映像制作の現場では、照明の演出が作品の印象を大きく左右します。iPadで照明を制御できるBlackoutは、持ち運びの負担が少ない手段として、現場の選択肢を広げてきました。V3の高速化やエフェクトエンジンの強化、ピクセルマッピングへの対応は、複雑な照明を扱う現場には魅力的な進化です。
一方、V2の所有者は、今すぐ乗り換えるかどうかを、費用だけでなく、運用面から考える必要がありそうです。撮影現場ではシステムの安定が最優先なので、V2を使い続ける場合は、iPadのOSを更新する前に動作を確認するなど、慎重な運用が求められます。V3のサブスクリプション費用は、貸し出しの案件があれば回収できるという見方もありますが、使い方次第です。自分の用途で必要なティアと、移行クレジットの実際の金額を確かめてから判断したいところです。
本文は海外メディアで公開された情報を参考に、日本向けに内容を整理・要約しています。
料金とティアの内容は、Blackout公式の料金ページに基づく編集部補足です。
画像:Blackout Lighting Consolel
参照:Blackout V3 is HERE
※掲載画像はBlackout Lighting ConsolelのYoutube Channeより引用しています。
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