
Blackmagic Designは2026年10月1日、ACSの撮影監督エドワード・ゴールドナー(Edward Goldner)氏が、ドラマシリーズ「Treasure and Dirt(原題)」をBlackmagic URSA Cine 17K 65デジタルフィルムカメラで撮影したことを発表しました。
リリースによると、このカメラが選ばれた理由は、広大なアウトバックの環境に適した65mm RGBWセンサーを搭載していることでした。骨太な犯罪ドラマシリーズに最適なセンサーだったとされています。
本記事では、ゴールドナー氏が語った撮影の方針や機材選び、17Kのワークフローについて、リリースの内容を整理してお届けします。
この記事のポイント
- ドラマシリーズ「Treasure and Dirt」が、Blackmagic URSA Cine 17K 65で撮影された。
- 選定の決め手は解像度よりも65mmセンサーのサイズで、17K・8K・4Kのいずれでも同じセンサーサイズを保てる点が評価された。
- 17Kのオープンゲート、フルワイドで撮影し、ポストで上下をわずかにトリミングして2.39:1に仕上げた。圧縮はQ3を選択。
- カメラは基本的に固定し、T16〜T22まで絞り込んで背景を残す、簡素で構造的な画づくりを採用した。
- レンズはTribe7 Blackwing7 T-Tunedの単焦点を使用。過酷な砂漠環境でも、露出ラチチュードが期待に応えたと語っている。
ドラマ「Treasure and Dirt」とは
「Treasure and Dirt」は、オーストラリアの作家クリス・ハマーの小説を原作とした作品です。マデリン・ゴットリーブ(Madeleine Gottlieb)氏が監督を務め、マイケル・ドーマン(Michael Dorman)氏とリヴ・ヒューソン(Liv Hewson)氏が主演します。奥地のオパールの町で起きた鉱夫殺害事件を、殺人課刑事のイヴァン・ルチッチ(演:ドーマン)と、田舎の刑事ネル・ブキャナン(演:ヒューソン)が捜査します。
制作はEasy Tiger ProductionがABC向けに行い、BBCおよびSouth Australian Film Corporationと共同で制作されています。海外の報道によると、全6話の犯罪ドラマで、実在するオパールの町クーバー・ピディで撮影され、2026年7月にオーストラリアで配信が始まりました。また、新しいBlackmagic URSA Cine 17K 65を使った、オーストラリア初の主要な長編作品とも報じられています。日本での配信予定は、リリースには記載がありません。
極めて簡素で構造的な画づくり
ゴールドナー氏とゴットリーブ監督が目指したのは、極めて構造的でミニマルなイメージです。ゴールドナー氏によると、視覚的なアプローチはきわめて簡素で、明確な動機がない限りカメラは固定するのが基本でした。動きの動機は、通常、フレーム内で俳優が行った動きの反映です。ドラマの簡素で無表情なトーンと荒涼とした砂漠の環境のなかでは、根拠のないカメラの動きや装飾が目立ち、わざとらしく感じられたといいます。
背景を残して環境に存在感を与えるため、絞りはT16〜T22と大きく絞り込んで撮影しました。映像に少し古き良き時代の雰囲気を加えるとともに、番組の舞台が登場人物に与える影響を強調する狙いもあったと、ゴールドナー氏は語っています。舞台劇のように、できるだけ広い画面の中に多くの動きを収める演出で、広いフレームを活かした構成です。
17Kオープンゲートで撮影し、2.39:1に仕上げ
撮影は17Kのオープンゲート、フルワイドで行い、ポストプロダクションで上下をわずかにトリミングして、公開用の2.39:1フォーマットに調整しました。データ効率が非常に高かったため、圧縮はQ3を選択しています。
ゴールドナー氏は、17Kのファイルと65mmセンサーの組み合わせから巨大なファイルサイズを想像しがちだが、実際はそうではなかったと説明します。興味を持った理由は解像度よりもセンサーサイズで、テストの結果、17K、8K、4Kのいずれもセンサー内のスケーリングにより同じセンサーサイズを保持できました。カメラのデータ管理が効率的なため、17Kでもポストプロダクションでの作業が極めて扱いやすかったといいます。
2台のカメラと別働隊、Blackwing7を選んだ理由
ゴールドナー氏は、Lemac Film and Digitalからカメラをレンタルし、SOC所属のカメラマンのマット・ドブソン(Matt Dobson)氏とともに、2台のURSA Cine 17K 65で撮影しました。3台目のカメラは別働隊用に使用しています。
レンズには、Tribe7 Blackwing7 T-Tunedの単焦点を選びました。開放絞りで使え、収差や質感を強調することで独特のルックを作れる点が理由です。ゴールドナー氏によると、作品には異なる視覚言語があります。刑事たちが存在する通常の世界は、厳格で構造化されたフレームと深い焦点で描き、より柔らかな美学が求められるカルトの世界は、Blackwing7が美しく表現したそうです。視聴者が、カルトの指導者に引き込まれ洗脳されているような感覚を味わえるようにしたかったと述べています。
過酷な砂漠でも変わらなかった露出ラチチュード
舞台となった砂漠の環境は過酷で、多くの地元住民は地下の壕で生活しているといいます。ゴールドナー氏は、オーストラリア国内でも撮影が最も困難な場所の一つだと語ります。そうした中でも、URSA Cine 17K 65の露出ラチチュードは期待に応えました。明るい太陽の下から洞窟内の薄暗い場所へと環境が変わっても性能が持続し、ISO 1600でもハイライトの再現性がよく、シャドウ部分のノイズも最小限に抑えられたとしています。
慣れを重んじるタイプなので、長編で使い慣れないカメラシステムは避けたいと思っていたものの、短時間の使用でも驚くほど快適で直感的に操作できたといいます。速いペースの撮影では、この点が非常に重要だったと語り、結果にも大満足で、このフォーマットがドラマを美しく引き立てたと結んでいます。
Blackmagic URSA Cine 17K 65とは
Blackmagic URSA Cine 17K 65は、65mmの大判センサーを搭載したデジタルフィルムカメラです。主な仕様は次のとおりです。
| センサー | 65mm RGBW(約50.8×23.3mm) |
|---|---|
| 最大解像度 | 17,520×8,040 |
| ダイナミックレンジ | 16ストップ(メーカー公称) |
| 解像度の切り替え | 17K・8K・4Kのいずれもセンサー内のスケーリングで同じセンサーサイズを保持 |
編集部コメント
今回のリリースで印象的なのは、ゴールドナー氏がURSA Cine 17K 65を選んだ理由として、17Kという解像度ではなく、65mmセンサーのサイズを挙げている点です。17K、8K、4Kのいずれでもセンサーの画角が変わらないため、ファイルの重さを抑えながら大判の画角を活かす使い方もできます。実際にQ3圧縮で扱いやすかったとされており、17Kという数字だけで大判カメラを判断しがちな見方を見直す材料になりそうです。
もう一つは、画づくりの方針と機材選びが一貫している点です。カメラを固定して動きに動機を求め、T16〜T22まで絞り込んで背景を残すことで、荒涼とした環境そのものを演出の一部にしています。その一方で、カルトの世界にはBlackwing7の柔らかい描写を当てるなど、場面ごとにレンズで視覚言語を使い分けています。大判センサーを、浅い被写界深度のためではなく環境描写のために使うという選択は、映像制作者にとっても参考になる事例といえるでしょう。
本記事はBlackmagic Design公式のプレスリリースを参考に構成しています。撮影地や配信状況などの補足情報は、海外メディアの報道を参考にしています。
画像:Blackmagic Designニュースリリース
参照:Blackmagic Design最新ニュース
※掲載画像はメーカー公開のニュースリリースより引用しています。
カメラ基本情報
カメラ・レンズ・ジンバル スペック比較データベース
1,467点のカメラ・レンズ・ジンバルなど映像制作機材のスペックを横断的に比較できるデータベースを公開しています。気になる製品を選んで詳しい仕様をチェックしてみてください。
機材データベースで比較する











