
日本経済新聞(日経)が行ったキヤノン・ニコン・ソニー・富士フイルム各社首脳へのインタビュー記事のうち、キヤノン副社長執行役員の戸倉剛氏の発言を海外メディアが取り上げ、今後1〜2年でキヤノンが注力する分野について論評しています。
本記事では、若年層に支持されるコンパクトデジタルカメラの捉え方、動画・ハイブリッド製品への取り組み、そして海外メディアが指摘する今後のレンズ戦略への期待と課題について整理して紹介します。
この記事のポイント
- 戸倉氏は、若年層に牽引されるコンパクトデジタルカメラの成長について、性能や画質だけでなく「撮影体験そのもの」を楽しむ需要が背景にあると分析しています。
- 動画用「Vシリーズ」レンズのラインナップ拡充に注力する方針を示し、動画・静止画どちらにも使えるレンズ作りを重視するとしています。
- 現行のVシリーズカメラはPowerShot V1、EOS R50 V、EOS R6 V(2026年5月発表)の3機種で、海外メディアは上位となるAPS-C「Vシリーズ」機の投入を推測していますが、これはあくまで推測です。
- 海外メディアは、動画寄りの機材展開に一部の写真愛好家から不満の声が出ていると指摘し、明るい大口径単焦点レンズの拡充を求めています。
- 直近ではIBISを搭載したEOS R8 Mark II(2026年9月発表)が投入されており、今後予定されるAPS-Cラインナップの刷新も同様の方向性をたどると海外メディアは見ています。
キヤノンが見るコンパクトデジタルカメラ需要の変化
戸倉氏は日経の取材に対し、次のように述べたと紹介されています。
「現在のコンパクトデジタルカメラの成長は若い世代が牽引しています。彼らは高性能や高画質だから買っているわけではありません。多少不便であっても、撮影する体験そのものを楽しんでいるのです。従来のラインナップは性能と価格を軸にしていましたが、そこに(撮影体験のような)スタイルの要素を組み込む必要があります。誰もが自分なりの自己表現の方法を持っており、世界中で写真の楽しみ方が多様化しています」
海外メディアは、カメラ愛好家やガジェット好きが業界全体を代表しているわけではないと繰り返し指摘しています。多くのユーザーがカメラやレンズにこだわりを持って投資している一方で、キヤノンをはじめとする各メーカーの顧客の大多数は、機材に数千ドル規模を投じる準備ができているわけではないとしています。今後相次ぐとみられるコンパクトカメラの展開は、業界がどこへ向かっているのか、そして各メーカーが新規顧客をどう獲得していくのかを見極める材料になるだろうとも述べています。
動画・ハイブリッド製品の今後
動画・ハイブリッド製品の方向性について、戸倉氏は次のように述べています。
「顧客の要望を踏まえ、動画用『Vシリーズ』レンズのラインナップを拡充していきたいと考えています。動画用レンズの選択肢をさらに強化する必要があります。レンズが動画・静止画の両方に対応できることが重要であり、動画向けに設計されたレンズも、問題なく静止画撮影に使えるようにしたいと考えています」
現行のVシリーズカメラは、PowerShot V1、EOS R50 V、そして2026年5月に発表されたEOS R6 Vの3機種です。今回の発言ではVシリーズレンズの拡充には触れられているものの、新型Vシリーズカメラへの言及はありません。海外メディアは、より上位のAPS-C向け「Vシリーズ」機(仮に「EOS R7 V」のような機種)が開発されている可能性があるとみていますが、これはあくまで海外メディア側の推測であり、キヤノンが公式に言及したものではない点に注意が必要です。
写真愛好家が求めるレンズとは
海外メディアは、動画を意識した機材展開が続くことに、一部の写真愛好家がやや不満を募らせていると指摘しています。動画とハイブリッド性能を重視したカメラやレンズ自体を否定しているわけではなく、SNS撮影を楽しむ新規顧客層には歓迎される方向性だとしつつも、写真家からは「フルサイズの規格を目一杯活かし、計算補正に頼らない明るいレンズ」を求める声が根強いとしています。SigmaがニッチながらF値の明るいレンズ展開に力を入れていることも引き合いに出されています。
海外メディアの読者から最も要望が多いレンズとして挙げられているのが「RF35mm F1.2L」です。キヤノンは既にRF35mm F1.4L VCMを発売済みですが、これよりもさらに明るいF1.2クラスの単焦点を望む声が強いとされています。筆者個人の要望としては、RF200mm F1.8L IS USMやRF28mm F1.4L(VCMまたはUSM)を挙げていますが、いずれも量産効果が見込みにくい製品であり、現状のキヤノンはVCM搭載のL単焦点レンズのように、比較的入手しやすく明るいレンズに軸足を置いているとの見方を示しています。複数の小売店からも、写真家が動画偏重の製品展開に食傷気味であるとの声を聞いているとしています。
ボディは好調でもレンズ戦略には課題
海外メディアは、キヤノンがこれまで若年層の取り込みに苦戦してきた経緯を指摘しています。その機会をいち早く捉えたのがSonyであり、成果を上げてきたとしています。一方のキヤノンは、プロフェッショナル層やレガシーユーザー、新興市場を中心に据え、他社に対して優位に立つブランド力を軸とした戦略を取ってきたと分析しています。
レンズの選択肢という点では、直近の発表を通じてSonyが各レンズセグメントでキヤノンを上回りつつあるとの見方を示す一方、キヤノンは売上高・利益ともに業界最高水準にあり、うまくいっている部分も多いと評価しています。カメラボディについては、2026年9月に発表されたEOS R8 Mark IIを例に挙げ、人間工学に基づく設計変更やIBIS、プリ撮影機能といった上位機能の追加を高く評価。今後予定されるAPS-Cラインナップの刷新も同じ方向性をたどるだろうと予測しています。総じて、カメラボディについてはおおむね評価できるものの、レンズのラインナップにはまだ課題が残るというのが海外メディアの見解です。
編集部コメント
今回の戸倉氏の発言から見えてくるのは、若年層向けの「撮影体験」を重視したスタイル志向と、動画・静止画両対応を掲げるハイブリッドレンズ戦略という、キヤノンが同時に進めている2つの方向性です。一方で、既存の写真愛好家が求めているのは、計算補正に頼らない大口径の単焦点レンズという、やや異なるベクトルの要望であり、海外メディアが指摘するように、この間のバランスをどう取るかが今後の注目点になりそうです。
EOS R8 Mark IIのようにボディ側の完成度が評価される一方、レンズラインナップの拡充がVシリーズ寄りに偏っているとの指摘は、フルサイズ・APS-Cを問わず明るい単焦点レンズを検討している映像制作者や写真愛好家にとって、今後の製品計画を占ううえで参考になる視点でしょう。キヤノンが動画需要に応えつつ、写真愛好家が求める大口径レンズにどこまで手を広げるのか、今後のRFレンズのラインナップ発表を注視していく必要があります。
本記事の発言は日本経済新聞のインタビューに基づくもので、これを紹介した海外メディアの記事を参考に、日本向けに内容を整理・要約しています。
参考記事:Canon Says They Remain Focused on Video and Hybrid Cameras and Lenses
※掲載画像について
掲載画像はイメージです。実際の製品・仕様・デザインとは異なる場合があります。
カメラ・レンズ・ジンバル スペック比較データベース
1,467点のカメラ・レンズ・ジンバルなど映像制作機材のスペックを横断的に比較できるデータベースを公開しています。気になる製品を選んで詳しい仕様をチェックしてみてください。
機材データベースで比較する











