
TecnoTurを運営するAllan Tépper氏が、著者Anna Pittman氏の長編オーディオブックを、著者本人の声をクローンしたナレーションで制作した舞台裏と、その流通の方法を、海外メディアのコラムで紹介しました。
対象は『Remembering: Wholeness and Awakening through the Twelve Steps』の英語の初版で、原稿は308ページ、63,325語です。TecnoTurがこれまで手がけたオーディオブックは、プロのナレーター、第三者のクローン音声、著者本人の生の声のいずれかでしたが、今回は、著者本人の声のクローンを使いました。
なお、筆者は制作と流通を担ったTecnoTurの側の人物で、同社のサービスの紹介も含まれる内容です。
この記事のポイント
- 著者本人の声をクローンして、英語版のオーディオブックのナレーションを制作した。
- 原稿は308ページ、63,325語で、プロのナレーターによる録音は、録音、撮り直し、編集を含めて大きな作業になる。
- クローン用の音声は、以前に別の担当者が、MXL 770コンデンサーマイクで録音した瞑想音声だった。
- ElevenLabsのProプランを採用し、原稿から発音に自信のない語の一覧を作る機能を、筆者は高く評価している。ただし、人による聴き直しと手動の修正は、引き続き必要としている。
- 流通は、直接販売を中心に、Spotifyでの配信と、11か国での印刷版の提供を組み合わせている。
なぜ著者本人の声のクローンにしたのか
TecnoTurは、スペイン語(カスティーリャ語)、英語、イタリア語のオーディオブックを制作してきましたが、これまでの作品は、短めか中程度の長さが中心でした。Anna氏は、初の著書『Remembering』の編集、制作、すべての形式での流通をTecnoTurに依頼しました。最終的な原稿は308ページ、63,325語になり、通常より長い作品になりました。
筆者によると、プロのナレーターでも、安定した品質で録音できる時間は、1日に限られます。この分量を、録音、撮り直し、編集まで含めて進めるのは、非常に大きな作業になります。Anna氏は、ナレーションを自分の声に近いものにしたいと考え、実用性と予算の両面から、初版の英語版について、自分の声のクローンを依頼することにしたといいます。
クローン用の録音素材
クローンの元になったのは、Ernesto Morales-Ramos氏が、以前に、別の小さなプロジェクトとして録音した、Anna氏の瞑想音声です。この録音は、筆者がAnna氏とビデオ会議で初めて話す前に、すでに行われていました。
Morales-Ramos氏によると、録音にはMXL 770コンデンサーマイクを使ったそうです。筆者は、このマイクを自分で使ったことも、レビューしたこともありませんが、良い録音が得られたとしています。
ElevenLabsのProプランでクローンと発音を確認
筆者は、過去に、FlexClip、ElevenLabs、Descript、DaVinci Resolve Studioを比較した記事を書いており、その後も複数のサービスを比較しています。そのうえで、今回のプロジェクトには、ElevenLabsのProプランを選びました。使うたびに品質が良くなっていると評価しています。
特に評価しているのが、筆者が「プロアクティブなボイスオーバー用語集」と呼ぶ機能です。書籍のePUB版をインポートすると、ElevenLabsが63,325語の原稿を分析し、発音に自信のない用語や名前の一覧を作ります。各項目には、ElevenLabsの最初の推測による発音を聞ける再生ボタンと、必要に応じて、音標文字で正しい発音を入力できる欄があります。
筆者は、この機能が、各章や各節を人が聴き直して、必要な箇所を手動で修正する作業の代わりにはならないと述べています。そのうえで、作業の良い出発点になるとしています。
直接販売を中心にした流通
筆者によると、著者は、直接販売で最も高いロイヤリティを得られます。特に、インタラクティブなオーディオブックと電子書籍で、その差が大きいといいます。そのため、主な流通は、書籍の専用サイトRemembering.infoでの、直接のオンライン販売です。これは、TecnoTurのMyBookPortalとProlific Websiteというサービスの一部として提供されています。
章や節の間を移動できるインタラクティブなM4B形式のオーディオブックと、ePUB版の購入者の中には、どのアプリで聴く、あるいは読むのがよいのか、分からない人もいます。そのため、利用するプラットフォームごとに提案する案内ページを、Remembering.info内に設けました。案内ページは、サイトのフッターメニューと、購入直後に自動で届く領収書のメールにも載せています。このオーディオブックは、Spotifyでも聴けますが、著者が受け取るロイヤリティは、直接販売より大幅に低いとされています。
11か国で提供される印刷版
Remembering.infoには、印刷版を入手できる国へのリンクも掲載されています。元記事の公開時点では、アルゼンチン、オーストラリア、チリ、コロンビア、エクアドル、メキシコ、プエルトリコ、スペイン、ウルグアイ、英国、米国の11か国で、国ごとのリンク先には、現地の通貨での価格が表示されます。掲載されているラテンアメリカの国々は、TecnoTurの、まだ発表されていない最新の拡張流通によるものです。
編集部コメント
今回の事例で参考になるのは、著者本人の声をクローンする判断の背景です。筆者は、プロのナレーターでも、1日に録音できる時間が限られるため、63,325語の原稿を、録音、撮り直し、編集まで含めて進めるのは、大きな作業になると説明しています。そのうえで、著者が自分の声を望み、実用性と予算の面から、クローンを選びました。クローンの元になる録音が、別の案件で、すでに用意されていた点も、この方法を選べた条件の一つといえそうです。
もう一点は、AIによる発音確認の位置づけです。筆者は、発音に自信のない語を一覧にして、再生して確認し、音標文字で修正できる仕組みを高く評価する一方、章ごとの人による聴き直しと、手動の修正は必要だと述べています。AI音声を使った制作は、作業を減らす一方で、確認の工程が残ることを示す事例です。なお、筆者は同社の運営側で、サービスの紹介を兼ねた内容でもあり、費用や時間をどれだけ減らせたのかについては、具体的な数字が示されていません。
本記事は海外メディアで公開された情報を参考に、日本向けに内容を整理・要約しています。
参考記事:1st author-narrated audiobook with her own cloned voice
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