
カリフォルニアを拠点とするBantaray Mobile Sports Productionが、ニッチなスポーツの中継制作に使うモバイルプロダクションの構成に、AJA製品を取り入れている事例を、AJAが紹介しています。
トラック競技からピックルボールまで、多様なニッチスポーツは、オンラインで熱心な視聴者を獲得しています。こうしたイベントの制作にも、大規模なスポーツ中継と同じく、プロダクショントラック(中継車)、コメンタリーブース、会場内のディスプレイとの間で、映像と音声を長距離伝送するという課題があります。
創設者のスティーブ・バンタ氏(Steve Banta)と、フリーランスのカメラオペレーターのジェフ・ハイバウ氏(Jeff Highbaugh)は、会場ごとに条件が異なる中で、光ファイバーとSDIの変換と伝送に、AJA FiDO Mini-Convertersを中心に使っています。あわせて、AJAのSDI/HDMI Mini-ConvertersやKi Proレコーダーも導入しています。
この記事のポイント
- AJA FiDO Mini-Convertersを中心に、SDI/HDMI Mini-ConvertersとKi Proレコーダーを組み合わせて、モバイルプロダクションを構成している。
- FiDOを24台所有し、光ファイバー1本で最大4台のカメラの信号を伝送できる。
- 最長1,000フィート(約300m)の光ファイバーリールを連結でき、音声にはDanteを使うことが多い。
- 雨や酷暑、移動の多い現場でも使い続けており、Spectrum向けの数十件の放送制作と、100件以上のリモート野球制作で、問題なく使えたとしている。
- 今後は、Acrisure Arenaの放送制作設備の構築や、リモートワークフロー、SMPTE ST 2110などのIP制作技術に注目している。
会場ごとに条件が違うニッチスポーツの中継制作
Bantarayは2009年の設立以来、ライブスポーツ向けのモバイルプロダクションの構成を改良してきました。現在は、オレンジカウンティやリバーサイドの高校スポーツをSpectrum向けに制作しているほか、Coachella Valley Firebirdsのイベント制作の支援や、その他のニッチなスポーツ中継にも、同じ構成を使っています。
バンタ氏によると、イベントごとに会場の条件が異なり、長距離の信号伝送は、ほぼ毎回の課題です。リポーターの映像をトラックに戻すこと、会場のLEDディスプレイに番組の映像を送ること、会場内で映像と音声を安全に引き回すことには、手軽な方法を見つける必要があるといいます。事前に会場を下見できる機会は少なく、Google Earthで会場を確認し、中継車の駐車位置やケーブルの配線を事前に計画しています。
光ファイバーとFiDOで組む伝送の構成
ハイバウ氏は、光ファイバーを使う利点として、トラックを敷地内のどこにでも駐車でき、FiDOを使って必要な長さまで光ファイバーをデイジーチェーンで接続し、映像と音声を素早く展開できる点を挙げています。1本の光ファイバーで、4台のカメラを運用できるとしています。
BantarayはFiDOを24台所有しており、シングル、デュアル、4チャンネルのモデルが含まれます。これらは、I/Oパネルと音声機器を収めたポータブルのブースキットに組み込まれています。コメンタリーブースの周囲に置いた複数のカメラからのSDI信号は、ブースキットに入力され、FiDOで光ファイバーに変換されたあと、4つの信号を伝送できる4対のタクティカル光ファイバーケーブルで、プロダクショントラックに送られます。
バンタ氏によると、通常の制作には、プロダクショントラック、最も多くの信号が行き来するコメンタリーブース、場合によってはビデオスコアボードが関わります。そのため、電力の制約なしに、長距離で映像と音声を伝送できることが必要です。最長の光ファイバーリールは1,000フィート(約300m)で、音声には、ネットワーク経由で音声を伝送する規格のDanteをよく使います。両端にFiDOがあれば、光ファイバーリールを必要なだけ連結できるといいます。
FiDO以外では、モニタリング用にSDI信号をHDMIに変換するAJA Mini-Converters、信号管理用の分配アンプ、収録用のAJA Ki Proレコーダーを使っています。
少人数のクルーに求められる扱いやすさ
ハイバウ氏によると、Bantarayのクルーは大人数ではなく、全員が複数の役割をこなします。そのため、機材には、信頼でき、一貫して動作し、扱いやすいことが求められます。FiDOは、SDIと光ファイバーの変換を確実に行い、現場で信号を変換したり、従来のSDIより遠くまで延長したりする柔軟性をもたらしているとしています。
機材の信頼性
Bantarayにとって、どの制作でも機材の故障は許されません。AJAの機材は、Spectrum向けの数十件の放送制作と、100件以上のリモート野球制作で、問題なく使えたとされています。バンタ氏は「ライブ制作では信頼性がすべて」と述べ、安価な代替品のトラブル対応を繰り返すより、信頼できる機材に一度投資するほうがよいと考えています。また、現場に、AJAのようなプロ用の機材があると、自分たちがきちんとした制作会社だと、クルーに伝わるといいます。ハイバウ氏も、FiDOはあらゆる天候で使ってきたが、期待を裏切られたことはなく、その信頼性が全員の安心につながると話しています。
今後の取り組み
ニッチスポーツがストリーミングを通じて熱心な視聴者を獲得し続けるなか、Bantarayは今後も機会が広がると見ています。同社は現在、カリフォルニア州サウザンドパームスのAcrisure Arenaで、館内のエンターテインメントとコンサートの放送制作のセットアップを構築しています。あわせて、リモートワークフローの進化や、SMPTE ST 2110などのIP制作技術にも注目しています。
バンタ氏は、多くの人がAIに注目する一方で、自分たちはリモートワークフローの行方により関心があると話しています。パンデミックで業界の導入が進み、その後も進化を続けているといいます。ハイバウ氏は、マルチカメラの分野へのさらなる拡大に向けて、帯域が限られた状況やリモートの現場でも、高品質で低遅延の信号を効率的に送れる技術を探していると述べています。
編集部コメント
この事例で参考になるのは、少人数のクルーが、機材選びで重視している点です。Bantarayは、全員が複数の役割をこなす体制のため、扱いやすく、一貫して動作することを優先しています。バンタ氏が、安価な代替品のトラブル対応を繰り返すより、信頼できる機材に一度投資するほうがよいと考える点は、ライブ配信のように、失敗をやり直せない現場に共通する考え方です。中小規模の制作チームにとって、機材の価格だけでなく、現場でのトラブル対応にかかる手間まで含めて検討する材料になります。
もう一点は、光ファイバーを使った伝送の設計です。1本の光ファイバーで4台のカメラを運用でき、必要に応じてリールを連結できるため、中継車を敷地内の好きな場所に停められるという点は、会場の条件が毎回変わる現場で効きます。事前にGoogle Earthで駐車位置や配線を計画するという進め方も、下見の機会が少ない制作で、現実的な工夫といえます。
本記事は海外メディアで公開された情報を参考に、日本向けに内容を整理・要約しています。
参考記事:Equipment failure isn’t an option, says Bantaray, who uses AJA gear
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