
映像機材レビューサイトのCineDは、量産最終ファームウェアを搭載したSony FX5の実機を用いて、恒例のCineD Lab Testを実施し、その詳細な結果を公開しました。結果によると、Sony FX5はフルフレームカメラの分野で新たなベンチマークを確立する性能を示したと結論付けられています。
特に、ダイナミックレンジとローリングシャッター性能は特筆すべき点です。ダイナミックレンジについては、ハイエンドのシネマカメラであるARRI ALEXA Mini LFに匹敵するレベルとされており、露光ラティチュードテストでもこの結果が裏付けられています。CineDでのテストファームウェアはV1.00です。
これらの高性能は、内部X-OCN LT RAWコーデックによって実現されており、CineDはコンシューマー向けの価格帯でこの性能を提供している点を「素晴らしい出来栄え」と評価しています。本記事では、CineDが公開した具体的な検証データをもとに、その性能を詳しく紹介します。
この記事のポイント
- CineDのラボテストで、Sony FX5はフルフレームカメラの新たなベンチマークを確立したと評価されています。
- ローリングシャッターは、デュアルゲインOFF時に5.6ms、ON時でも13.3msと優れた数値を記録。
- ダイナミックレンジ(5K X-OCN LT、ISO800、DG ON)はIMATESTでSNR=2時13.4段、SNR=1時14.4段と、ARRI ALEXA Mini LFにほぼ匹敵する結果に。
- 露光ラティチュードテストでは11段を記録し、ARRI ALEXA Mini LFやPanasonic LUMIX S1IIをわずかに上回る、フルフレームカメラの新記録となりました。
- 内部圧縮のXAVC S-Iコーデックでは、ラティチュードがRAW(X-OCN LT)より2段低い9段にとどまり、RAW記録の優位性が示されています。
CineDによるSony FX5ラボテストの概要
CineDは、量産最終ファームウェア(V1.00)を搭載したSony FX5の実機を用いて、同社恒例の標準化されたラボテストを実施しました。FX5は発表時、内部X-OCN LT RAW収録、3段階のベースISO、デュアルゲイン、そして将来のファームウェアアップデートで対応予定の最大4K240fps撮影といった特徴で大きな注目を集めていました。
今回のテストでは、直近にテストされたSony α7R VIと同様、デュアルゲインのセンサー読み出しモードを搭載。S-Log3撮影時、ISO800に固定した状態で低ゲインと高ゲインの露光を1回の撮影内で組み合わせることで、シャドウ側のダイナミックレンジを拡張する仕組みです。CineDはこれまでCanon C70、LUMIX GH6/GH7、そして直近でフルフレーム機の新基準となったLUMIX S1IIなど、複数のデュアルゲイン搭載カメラをテストしてきましたが、いずれもDGを「ON」にすると1〜1.5段程度ダイナミックレンジが拡大する一方、ローリングシャッターがDG「OFF」時の約2倍になる傾向があったとしています。
ローリングシャッター性能
300Hzのストロボライトを使った検証で、5K 17:9のX-OCN LT、デュアルゲイン「ON」時のローリングシャッターは13.3ms(数値が小さいほど優れる)という結果になりました。これは同社が4Kでテストしたα7R VIのDG「ON」時の15.5msをやや上回る(=速い)数値です。デュアルゲインを「OFF」にすると、5.6msという際立って優れた数値を記録しました。
興味深いことに、これまでテストしてきたデュアルゲイン搭載カメラは、DGをONにするとローリングシャッターが概ね2倍になる傾向がありましたが、FX5は約2.4倍とやや大きな増加を示しています。ただし、その絶対値(13.3ms)自体は、DG ON時に27.5msを記録したPanasonic LUMIX S1IIと比較すると、依然として非常に優れた水準にあるとしています。
ダイナミックレンジ
5K・ISO800・DG「ON」・S-Gamut.Cine/S-Log3でのX-OCN LTのウェーブフォームでは、ノイズフロアより上に13段をはっきりと識別でき、14段目もわずかに上、15段目もノイズフロア内に確認できたとしています。デュアルゲインの効果により、ノイズフロア自体も非常にクリーンな結果だったとのことです。なお、他社(Panasonic LUMIX S1IIのV-LogにおけるDRBoost)とは異なり、DGのON/OFFに関わらずS-Log3のクリッピングコード値は変化しないため、既存のS-Log3ワークフローとの互換性が保たれる点も指摘されています。
IMATESTの測定結果では、5K X-OCN LT・ISO800・DG「ON」において、SNR(信号対雑音比)=2の時点で13.4段、SNR=1の時点で14.4段という結果でした。内部RAWコーデックとしては「素晴らしい結果」と評価されており、これはARRI ALEXA Mini LF(ARRIRAWでSNR=2/1時に13.4/14.5段)とほぼ同水準です。また、同じく内部X-OCN LT収録に対応するSony BURANO 8K(SNR=2/1時に10.8/12.2段、ISO800)と比較すると、FX5は2.6段多いダイナミックレンジを示しています。
DGを「OFF」にした場合、5K X-OCN LT・ISO800では10.6/12段(SNR=2/1)となり、DG「ON」時と比べて約2.5段のダイナミックレンジ拡大効果が確認されました。また、S-Log3のベースISOはISO800のほか、ISO4000とISO12800の計3段階が用意されていますが、ISO4000では10.1/11.6段、ISO12800では9.1/11.2段(いずれもSNR=2/1)と、高いベースISOほどダイナミックレンジは大きく低下する結果となっています。
内部圧縮コーデック(XAVC S-I)でのダイナミックレンジ
内部収録の10bit 4K H264 4:2:2(XAVC S-I)モードでは、DG「ON」・ISO800でSNR=2時14段、SNR=1時14.4段という高い数値を記録しました。ただし、カメラ内蔵のノイズリダクションはオフにしているものの、一定のノイズ処理は残っているとされています。DGを「OFF」にした場合は12/13段(SNR=2/1、ISO800)で、この設定ではローリングシャッターが5.6msという非常に高速な数値になる点も付け加えられています。
露光ラティチュードテスト
露光ラティチュードは、露出をオーバーまたはアンダーにした映像を基準露出に戻した際、ディテールや色をどれだけ保持できるかを示す指標です。CineDでは、DaVinci Resolve 21のネイティブX-OCN LTサポートを用い、カメラ内のRAWコントロールで露出を調整したうえで、カラースペーストランスフォーム(CST)でRec709空間に変換して検証しています。
基準露出から4段オーバー露出させても、被写体の額の赤チャンネルはクリッピング寸前で踏みとどまったとのことです。その後、レンズの絞りを1段刻みでアンダー方向に閉じていく形でテストを進めた結果、5段のアンダー露出(=9段のラティチュード)まではほとんど問題が見られず、ここで初めてわずかなノイズの兆候が確認されました。ノイズリダクションで容易にクリーンアップできるレベルです。
6段アンダー(10段のラティチュード)まで進めても、色情報は完全に保持されており、粒状感の細かい自然なノイズにとどまっていたとしています。この時点で「ARRI ALEXA Mini LFに匹敵する水準」であり、同じく内部X-OCN LT収録に対応するSony BURANO 8Kが辛うじて10段を達成した際の画質と比べても、FX5の方が明らかに良好な結果だったと報告されています。
さらに7段アンダー(11段のラティチュード)まで進めると、ノイズはかなり目立つようになりますが、ノイズリダクション後は、キャプション下部などに横縞状のアーティファクトが見え始めるものの、顔の陰影部分の色は依然として復元可能で、大きな色かぶりもないことから「有効な結果」として扱われています。8段アンダーまで進めると、ノイズリダクションでも処理しきれない大きな輝度ノイズの塊が現れ、これ以上は限界(原文では「ゲームオーバー」)と判断されました。
最終的にSony FX5は、11段の露光ラティチュードという結果に到達し、これはARRI ALEXA Mini LFやPanasonic LUMIX S1IIをわずかに上回る、フルフレームカメラとしての新記録になったとCineDは評価しています。なお、ラティチュードテストにおける現時点での最高記録は、12段を記録したARRI ALEXA 35が依然として保持しているとのことです。
内部圧縮コーデック(XAVC S-I)でのラティチュード
内部の10bit 4:2:2圧縮コーデック(XAVC S-I)についても同様のテストが行われました。5段アンダー露出(9段のラティチュード)の時点で、すでにピンクがかった色かぶりが現れ、ノイズもX-OCN LTのような自然な粒状感ではなく、ブロック状になる傾向が見られたとしています。6段アンダー(10段のラティチュード)では、除去できないピンク〜赤系の個別ピクセルノイズや色ムラの塊が発生し、限界に達したと結論付けられました。結果として、XAVC S-Iのラティチュードは9段までにとどまり、これはRAW(X-OCN LT)の結果より2段低い数値です。CineDはこの差について「RAW記録の優位性を明確に示している」としつつも、9段という数値自体は2024〜2025年当時であれば十分に優れた結果だったとも付け加えています。
価格帯について
CineDの記事執筆時点では、Sony FX5の参考価格として4,898.00ドル(税別)/4,461.98ユーロ(税別)が示されていました。CineDは、これだけの性能をコンシューマー向けの価格帯で実現した点を高く評価しています。なお、日本国内ではソニーの公式発表に基づき、ボディのみ(ILME-FX5B)812,900円(税込)、XLRハンドルユニット同梱セット(ILME-FX5)900,900円(税込)が案内されています(国内発売は生産上の都合により延期中で、2026年9月18日時点の情報では10月下旬以降の発売が予定されています)。
編集部コメント
今回のCineDラボテストで特筆すべきは、ローリングシャッターとダイナミックレンジ、露光ラティチュードという複数の指標すべてで、ハイエンドのシネマカメラに匹敵する結果を示している点です。中でも11段という露光ラティチュードの数値は、フルフレームカメラとして現時点での新記録であり、シャドウを大きく持ち上げる編集が必要なドキュメンタリーやローライト撮影において、実務上のアドバンテージになり得ます。また、内部圧縮のXAVC S-IとRAW(X-OCN LT)のラティチュード差が明確に示された点は、コーデック選択の判断材料としても参考になるでしょう。国内発売は延期中ではあるものの、量産最終ファームウェアでのこの結果は、発売後の実運用に対する期待値を高めるものと言えます。
本記事は海外メディアで公開された情報を参考に、日本向けに内容を整理・要約しています。
参考記事:Sony FX5 Lab Test: Rolling Shutter, Dynamic Range and Exposure Latitude by CineD
参考:Sony FX5 Lab Test at CineD shows the camera has superb values!
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